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乳牛と主人そして命
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吸血鬼

皆さん、こんにちわ、私は乳牛みな子です。
これは、私たち乳牛の一生、そしてご主人との付き合いの物語です。

吸血鬼

 夏から秋にかけては、吸血害虫のもっとも盛んな時ですね。私ども乳牛にとっては血を吸われる大変な時期で、やつらは吸血鬼です。
吸血害虫とは、刺しバエ、蚊、アブなどですが普通のハエもおります。

 牛にはハエは付きものなんですが、今年は早くから刺しバエが出て盛んに我々を襲いかかります。よくたかり付くのは足で、しっぽの届かない所に集中してたかります。本当に厄介で痛いです。
ハエは猫や犬にはたかりませんよね。テレビでアフリカの草原を歩き回っているライオンは目の周りをハエが飛んでいるようですが体には集らないようです。でも草食動物にはよく集るようです。

 ハエは糞や残渣などに卵を産み付けて、そして蛆としてこれらを餌とし、冬を越冬して春に成虫になって、また卵を産み付け、夏に向かってどんどんその数を多くしていきます。よって、成虫を殺すか蛆を殺せば良いことになります。ですのでご主人がそれなりの努力を怠りなくやってくれれば、そんなには数は増えないのですが。でも、同じ殺虫剤を使いすぎれば抵抗性が出来て効かなくなります。成虫は抵抗性が出来やすいので蛆を殺したほうが効果があがります。
ところで、牛飼いの農家は意外とハエには鈍感です。以前、住宅の便所も汲み取りの頃はハエも結構発生していたのですが、水洗便所になってからはハエも少なくなり、ハエを見つけた時など大騒ぎするようになってきましたね。本当に衛生的になったものです。もっともご主人の便所は今だかって汲み取り式ですが。
ご主人は脱皮阻止剤のネポレックスを牛舎に使用していますが、住宅の方にも使用しています。これを撒いておくと住宅では2ヶ月以上蛆はわかないようです。

   奥さんはボロ出しの時、ネポレックスを毎回散布してくれますがどことなくハエは発生しますね。この薬結構高いのが難点ですが効いてくれます。
しかし、すべてがこれで押さえられるわけでもないので、だんだんと増えていきます。
春先からは、イエバエが増えていきます。これは吸血はさほどしないのですが、とてもうるさいハエで体中にたかり付きます。口先や尻尾で振り払うのですが、何百もののハエは振り払った後すぐにたかり付きます。本当にストレスが溜まりますね。
梅雨頃から、吸血鬼のサシバエが目立つようになり、夏、秋と爆発的に多くなっていきます。秋頃は、イエバエは少なくなりほとんどがサシバエですね。
このサシバエはその名の通り口を差し込んで血を吸います。本当に痛いですよ。振り払っても振り払ってもたかり付きますので大変です。特に、朝と夕方は吸血が盛んです。
ご主人の朝の搾乳もこのサシバエが吸血するときなので、我々は尻尾を振って振り払ったり足を上げるので、時にはご主人を尻尾で叩いたり、足で蹴ったりとしますので、とてもご機嫌を悪くするときもあります。
こんなことで、我々もご主人も吸血鬼は大嫌いです。

 ご主人は、ハエ取り紙を使ってハエの集る所に持ってきてハエをハエ取り紙に集らせようとされますが、ハエも簡単には集りません。でも夕方、もっともハエの活動が活発な時には集ってきます。牛の横にハエとり紙を持って立っているだけで数百匹は取れます。
しかし、そう何時もは出来ないようです。
ご主人は時々足に集団でたかり付いているサシバエを、手で叩いて取ってくれますが、その点は良いとしてもやはり叩かれるのは痛いですよ。
牛舎の歩きの南側の日当たりの良い所に、この大きさがA3程度のハエ取り紙をおいて置くと2,3日で本当に真っ黒けになるほど取れます。おそらく2,3千のハエが取れているでしょう。

 晩秋になると気温が下がってくるとサシバエも動きが鈍くなります。
朝、気温が16度程度になると、あまり我々にたかり付かなくなります。でも日中気温が上がって来ると、盛んにたかり付き吸血します。
サシバエも気温に順応するようで、時として14度くらいでも活動しますが、その数はうんと少なくなります。
日中の最高気温が14度割るようになると出てこなくなり、私たち乳牛もご主人も本当に楽になりますね。ストレス解消です。

 ハエは糞に卵を産み付けるので、積み上げて切り返しをすれば発酵熱が出て、蛆も死んでしまいますがご主人もなかなかそこまでは手が回らないようです。

 さて、蚊も夏には猛威です。ご主人の牛舎の近くには竹やぶがあるので、やぶ蚊などがものすごく発生します。時々、ご主人は殺虫剤を牛舎回りに降ってはくれますがそう簡単には減りません。

 防虫灯が良く取れると云う人もおるのですが、ご主人の防虫灯はよく入らないようです。防虫灯のあの紫がかった明かりには、蚊は寄ってこないようで、むしろ近頃の中白色の蛍光灯の明かりによって来ると思います。
どちらにしても吸血してから防虫灯に入っても今ひとつ面白くないですね。畜産用の蚊取り線香もあるようですが一晩中大型扇風機が回っているので煙もすぐに排気されます。匂いだけでも寄り付きが悪くなるのかも解りませんが、ご主人は蚊取り線香はやっていません。

 蚊の発生量は年によって、また雨の降る量によっても、違いがあるようです。
雨が多いときはボウフラが流されて成虫になりにくいのか意外と少ないですが、適度の雨の量では発生量が多くなります。
雨が降らない旱魃の年でもかなり発生するようです。

 今年の夏は適度に雨が降ったせいか、大発生でした。扇風機が回っているので風が常時動いているところは蚊はたかり付かないですが、風のよどむところの牛体にはそれこそ数十匹がたかりついて吸血します。
昼はサシバエに吸血され、夜は蚊に吸血されて、もう我々乳牛は最高にストレスが溜まります。

 ご主人も夕方の搾乳はこの蚊の襲来を受けるので殺虫剤を持って搾乳されます。搾乳に取りかかる前に殺虫剤を振りかけてから作業されるので蚊が匂いで逃げますがそれでもご主人にたかり吸血します。ご主人もあっち叩いたりこっち叩いたりで大変ですね。
我々乳牛は一晩中刺されっぱなしでもっと大変です。本当にいやですよ。
秋に入り気温が下がり始めると蚊はおらなくなります。こうなると本当にありがたいですよ。

 ところで、ご主人の趣味的な行動があります。これは身体に止まって血を吸っている蚊を手でつぶすことです。なかなか面白くてやめられないようですが、ま、かゆみがちょっとでも少なくなるのかな。でも、ずっとしてくれる訳ではないですよね。

 ハエ、蚊ときましたが、外から飛んで来る吸血鬼はアブもおります。
アブも夏の吸血昆虫です。こちらはハエや蚊と違って大型ですので、刺されれば痛いです。
「ブーン」と寄ってくれば私どもは、足を蹴り上げたり体をひねったりで、すごく警戒します。

 搾乳中に進入したアブは警戒されるので、あっち行ったりこっち行ったりしながら飛び回ります。こうなると、搾乳中の乳牛は落ち着かなくご主人をいらいらさせます。時にはミルカーを蹴り落としてしまうこともあるので、ご主人もアブを叩いて殺してくれますがなかなか叩けません。ちょうど、腹の横に止まったところを叩いてくれました。ありがたいです。

 アブでも蚊でも、炭酸ガスを嗅ぎ付けてやって来ます。牛舎からは大量の炭酸ガスが出るので吸い寄せられてやってきます。
山での放牧場はアブ取りとして炭酸ガスのでるドライアイスを使用し、これで箱の中に寄せ付けて集める方法のアブ取り機を使用されているところもあります。
私の牛舎では、そんな捕虫方法はしてありません。数も日に1,3ひきくらいですので、仕方ないでしょう。

   冬から春先にはシラミが涌きます。これも、やはり吸血鬼になるかと思います。
近頃、めっぽう少なくなりましたが、牛の子にも見られることがあります。
首を盛んに壁や柱にこすりつけてる行動が春先に見られると、そこにはシラミがおります。1ミリにも満たないようなシラミは首の下から上のほうにかけて付きます。
これも結構痒くて、壁や柱に毛が抜けるほどこすりつけますので、首の周囲に一部の毛が抜けておかしな格好しているようであれば、毛を抜いてよく見てみます。小さなシラミや卵が見え、親指の爪同士でつぶすと、プツプツ音がします。

 殺虫剤を振り掛ければ、退治できますので早く気が付いていただくことが肝心です。

 春先から初夏にかけて、外で放牧すると、必ずといってよいほどダニが付きます。これも大変ですね。
大体つくところは、目の周囲と耳の周囲が多いようです。よく、注意しておれば発見も早いです。

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