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乳牛と主人そして命
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6季節(2) 秋雨、秋 

6季節(2)

乳牛は季節が六季ありますね。今日はその中の秋雨についてお話します。

秋雨

 今年は夏が猛烈に暑くていたるところで最高気温を更新しました。こちら山陰地方も暑かったです。でも雨も結構降り、干ばつはなかったと思われます。
特に、8月の中旬に超大型台風が紀伊半島に上陸してからというもの、雨がよく降るようになり、その後太平洋高気圧も後退して夏は以外と早く終わったようです。 季節は秋雨と向かい、雨も多くなり気温はそれほどには上がらないが湿度が高く我々乳牛にとっては、夏ばてが出やすく、注意しなくてならない季節です。

 日本で始めての狂牛病(BSE)が今年の9月に発生し世の中は騒然とし、学校給食から牛肉が消え、政府の対応のまずさが問われた時期でもありました。
 9月に入り、結構雨も降り気温も30度を超える日が少なくなりました。
ところで9月10日は八重の分娩予定日です。ご主人は9月に入る早々に生まれた子牛を入れる牛房を掃除して消石灰で白くなるほど撒き準備を整えました。
八重には、日産合成のビタミン産前用を飲ませます。これはビタミンD3の1000万単位とA、Eの入った産前用のビタミンです。

 乾乳期の使用管理は私たち乳牛の本領を発揮するためには、大変重要な時期です。
近頃の乳牛は分娩直後から、大量の乳を生産するように改良されてきたためその栄養をいかに取るかが、飼い主の飼養管理の上手下手なんです。
乾乳期には、その為の準備段階でこの時期を上手に乗り切れ、次の段階の泌乳に周産期病など出さないようにしなくてはなりません。
近頃の技術では、乾乳期を前期後期に分けて飼養するようになっていますね。

 ご主人は前期では租飼料中心で配合はくれないですね。後期に入ると租飼料をそのままの状態で乾乳専用の配合を0.5〜1.5kと増量してくれます。そして、周産期病の予防にスーパーナイアシンを餌に振りかけてくれます。

 1週間前になると、乳房もだんだんと大きく張ってきました。このごろになると、ご主人は毎晩直腸より体温を測ります。
今日は39.4度です。分娩1週間前頃から体温は高めに上がり分娩12時間前あたりから0.5程度下がります。平熱は38.5ですのでちょっと高めですね。昨日も同じような体温でした。まだ大丈夫です。

 今年の9月は早々によく雨が降り気温は30度を切っていますが、湿度は結構高いですね。牛舎は通路まで湿気で濡れていて、あまり良くないです。ご主人は消石灰を通路や牛床に撒いて何とか乾くようにしておられますが、もちろん消石灰は消毒にもなります。

(分娩)
 9月7日になると分娩予定日3日前で、食欲は落ちてきて租飼料を残すようになってきました。だんだんと乳房も大きくなり分娩が近づいたと解ります。でも体温はまだ39.3度で高いので分娩しないでしょう。
奥さんも心配そうに「いつ生むのかな、まだ乳頭は張っていないし」と言っておられます。やはり、分娩は我々乳牛にとってもご主人にとっても大変なことなんですね。改良されて乳を沢山出すようになった為に、大型で特に骨盤が大きく難産になりやすいのです。
でも、夏を越して秋に分娩する乳牛は暑さの為に物食いが悪いため、子牛も大きくなりにくいので難産なるほどには大きくなりません。

 9月10日、夜の搾乳終了後、ご主人はいつもの体温計で検温すると38.9度になっております。これは分娩が始まる体温の低下です。でも何時に始まるのかは解りません。乳頭の張り具合からは、まだのようです。
ご主人は早速ワラを1抱え押し切りで切って、八重の敷き料にしたり子牛の敷き料用に通路に積んでおきました。
それから住宅に帰り奥さんに「体温が下がったな、今夜夜中起きしてみるか」と言っておられます。

 夜中の12時、いつもの今日最後の餌やりに来て、八重の状態を見ます。八重は立ったままです。そこで、10分くらい眺めていますが、どうもなんともないようです。
分娩が始まると、陣痛で気張り背中を曲げますけどその気配はないようです。「いつになるかな、3時頃に起きて来るか」と言って帰っていきました。
ご主人、目覚ましのラジカセのタイマーを3時の合わせて、すぐに寝てしまいました。

 深夜の3時ラジカセのNHK深夜放送が鳴り出しましたが、ご主人目を覚ましても起きません。疲労が溜まっているのでしょう。
10分位してようやく起き出したご主人、作業着を着て、住宅を出るとまだ真っ暗です。牛舎にやって来て八重の状態を見ます。やはり立っているので、これは始まったかなと15分くらい見ているのですが、どうもまだ陣痛は来ていないようです。
あくびしたご主人、「まだだ、帰って寝よう」と言って住宅に帰っていきました。そして、タイマーを6時にセットして寝ますが今度はなかなか寝付けないようです。でも何時の間にか寝てしまいました。

 6時やはりNHKラジオに起こされたご主人牛舎に来て様子を見ますがどうもその気配はありません。
ご主人、我々に、餌のトウモロコシサイレージをくれ、さらにイタリアンサイレージをくれて、搾乳準備に取り掛かりました。
カップに寒冷紗を取り付け、湯をだしてバケツに入れて、ミルカーの準備もして搾乳開始です。
前絞りをカップに取りブツの確認、ブツもないので軽く絞ったタオルで乳頭を拭いてミルカーを取り付けます。こうして搾乳しますが、この時期、夏の暑さで体力の弱った我々は乳房炎を発生しやすい時期でもあります。そこで、前絞りをカップに取りよくよくブツを確かめます。
4頭の搾乳を終わりミルカーを洗い始めた時です。八重が気張って小便しています。でもなんとなく落ち着きがありません。ミルカーを洗いながら八重を見ているとまたきばって、今度は糞を出そうとしていますがどうも出ないようです。そう、陣痛が始まったようですね。
急いでミルカー洗浄を終わり、牛の子の世話をして、切りわらを敷き料に広げてやります。始まったばかりで、まだまだ、時間はかかりそうですので朝食をたべることしました。

 ご主人と奥さんはそこそこに住宅より出てきて牛舎に入られました。
ご主人は瞬間湯沸しで湯をバケツに入れます。奥さんは子牛の胎水をふき取る布切れを準備されます。
バケツの湯に消毒剤の塩化ベンザルコルウムを入れて子牛を引き出すロープを浸し、もう一つのバケツにも消毒剤を入れて八重のところに持っていき、陰部を綺麗に洗います。それから片腕を肩まで出して消毒液につけ消毒します。
八重の陰部に消毒した手を入れようとしますが嫌がって尻を振ります。でもご主人なれた手つきで陰部の奥に手を入れていきます。
子宮口は完全に開き手が子宮の中に入っていきますがまだ胎児には触れないようです。
肩まで手が入ったところで胎児に手先が触れました。片方の足です。さらに奥にもう片足に触れます。片足をつかんで引っ張りますがそんなに出てきません。まだまだです。
ここでご主人は手を出し、湯で洗いながら、奥さんに、「まだ奥のほうで時間がかかるな、もうちょっとしてから手を入れてみよう」と言っておられます。

 まだ、2回目の餌やりが終わっていなかったので、ビートパルプと配合飼料をボールで次々とやっていかれます。八重には配合飼料はやりません。これは分娩直後の状態を悪くしない為です。八重はきばりながらビートパルプを食っています。 20分くらい経ったでしょうか、陣痛の間隔も10分位に短くなり、そして寝てしまいました。
 ご主人は再度肩まで消毒して陰部より手を入れます。今度はひじまでで足に触れます。ちょっと先にももう片足があります。さらに奥のほうに顔がありました。
これは正常な分娩の位置です。足もそんなには大きくありません。過大児の心配もないようです。ご主人は手を抜き出して奥さんに「大丈夫だ、もうちょっとで出て来るよ」と言っておられます。
それから20分あまりで、尿水の入った袋状の膜が丸く風船のように出て、気張った瞬間割れました。尿水がどっと出ます。さらに陣痛で羊水の入った膜状の羊膜が顔を出して片足も見えます。ご主人はこの袋を手で破るとヌルヌルの透明な羊水が流れ足が出てきました。そこで、ご主人は前もって消毒液に浸けていたロープを片足につけます。さらに手を入れてもう片方の足を引っ張り出しロープをつけました。
ここで、もう少し様子を見ることにします。八重は陣痛で気張ります。でもなかなか進行しないようです。ちょっとつかえた感じです。
15分くらい見ていたご主人は奥さんに「引っ張ってみるか」と言って軍手をはめて2人で出遅れている片足を引っ張り出しました。
すると、八重は痛いらしく唸りながら気張ります。ご主人は陣痛に合わせて引っ張りますがなかなか出て行きません。
今度は反対の足のロープをやはり陣痛に合わせて引っ張ります。すると、顔の鼻の部分が見えてきました。陣痛がおさまるとちょっとロープを緩めてやります。引っ張ったり緩めたりするのは、産道を痛めないためです。こうすることによって産道を広げ、緊張に耐えるのです。
次の陣痛でまた引っ張りますが、なかなか出ません。奥さんは腰に綱をあててご主人は両手で力いっぱい引っ張ります。
また陣痛にあわせて引っ張ります。少しずつ顔が出てきます。再度力いっぱい引っ張ると顔全体が出てきました。
ご主人は「それ行くぞ」とどんどん引っ張ります。胸が少しずつ出てきます。さらに引っ張ると、腹も出て腰のところで止まります。そうなんです。乳牛は腰が改良されて大きいのでここで必ずつかえるのです。
「もうちょっとだ」とご主人と奥さんは力一杯引っ張ります。するとどっと腰が出てきて後足もスルッと出ました。そうです、子牛の誕生です。新しい生命の誕生です。

 奥さんが子牛の口から鼻にかけての粘液を丁寧にふき取ります。弱よわしい呼吸をします。「大丈夫だ呼吸が出来る。生きている」とご主人。ロープを外して2人でボロギレで顔や、耳、胸と粘液を拭きとってやります。
「なにが出来た?」と後ろ足を持ち上げて見るとちゃんと金の袋が着いています。「またオスだ、今年はオスばかり」とがっかりした声でご主人がつぶやきました。
ボロギレやワラで子牛を丁寧にふき取り臍の緒をイソジン液で消毒して猫車に乗せました。それから子牛専用の牛舎に運び入れますが、この頃には元気で頭を持ち上げたり足をばたつかせるので、猫車から落ちないように奥さんは子牛を押さえつけて運びます。敷きわらでふんわりした上に運び入れました。
それから奥さんは、味噌と梅干を持ってきてバケツに湯を入れ、味噌汁を作り八重のところまで運んでやります。八重は起き上がり、すぐさま口をバケツに突っ込みながら飲みだしました。すぐに飲みバケツを取ろうとしても離しません。それでもバケツを取り上げ、また味噌汁を持ってきてやります。これもすぐさま飲み干してしまいます。よっぽど喉が渇いていたのでしょう。結局13リットルのバケツで6杯飲んだのです。これで、胃袋も一杯になり大きくなったことでしょう。
牛の子が出た後の腹腔は大きくすき間が空いているのでこれを第一胃で満たすことが重要です。その為にも欲しがるほど味噌汁を飲ませます。
次に、ご主人がビタミンとカルシュムの入ったスタンドアロンを飲ませます。これは産後よく起こる低カルシュウム血症を防ぐためです。
乳牛は乳を沢山出すように改良されています。その為、分娩後3日間は完全に絞るような急激な搾乳すれば乳房にカルシュウムをどんどん送り乳に変えてしまうため、生理的にも血中のカルシュウム濃度が低いこの時期は、低カルシュウム血症を起こし起立不能に陥りやすいのです。
でも近頃の技術書では分娩全に、ビタミン、カルシュウム制限、餌のイオンバランスなどを注意すれば低カルシュウム血症は起きないので乳を絞りきった方が乳房炎にもならなく良いとも書いてありますけど。
それからご主人はバケツに湯を入れてタオルを持って行き、搾乳の準備に取りかかり、約2リットルの初乳を搾ります。これは子牛用の初乳で、免疫成分が入っています。分娩直後の初乳が一番多く入っているのです。時間と共に免疫成分は減少して行くので直後に搾乳します。
初産の牛は起立不能を起こすような低カルシュウム血症を起こすにくいのでこの最初の搾乳はミルカーで一気に搾り取ります。これは搾乳という初めての経験を痛がらせず素早く終わるためですが経産牛はこの段階では子牛用の2リットルで手絞りします。もちろん乳房炎はよく確かめることが大事ですね。
こうして分娩も無事終わり時計を見ると10時30分でした。

 天気はまずまずです。よく9月に入ってから雨が降るので葉たばこの後作に飼料用大麦の撒きつけが遅れています。
ご主人は作付けの準備をすることにしました。反当り炭酸石灰6袋、苦度重焼燐2袋、硫安2袋を降ります。ここにはカリ成分がありませんが葉たばこでは相当量のカリを使用しているので土壌には十分のカリがあると思われるので特には降らないそうです。
5反分の肥料を軽トラックで運び、それをトラクターで降ります。
昼になり、ご飯を食べると、ご主人夕べからの寝不足もあり昼寝をしてしまいました。
まだ暑いので扇風機を回りっぱなしで、奥さんも昼寝です。

 30分ほどで起き上がりコーヒー1杯飲んで今度はトラクターで耕耘です。
トラクターは単調な作業で、ついお目目が閉じて大変なようで、耕耘跡が曲がっています。やはり、まだ寝不足のようです。
耕耘すると必ずカラスがやって来ます。おそらく夫婦カラスでしょう。2匹がトラクターの前になったり後ろになったりで、餌を探しているのでしょう。
夕方までかかり、今日はここまでです。

(哺乳)
 6時に牛舎に入りこれからサイロ出し、搾乳と乳牛の夜の作業です。
始めに朝生まれた子牛に初乳を飲ませるため2リットルの初乳を45度くらいまでガスで暖めます。指を入れて熱いくらいで、乳の温度は重要です。40度を切ると下痢の原因になるので45度を目安にします。また、初めての哺乳は時間がかかるので熱めにします。
子牛は寝ています。「おい、パイパイだ、起きろ」と言いながら足で子牛をつつくと立ち上がりました。
乳を右手にすくい口に入れて吸わせますが、何しろ初めてなので吸ってくれません。それでもどうにか吸うようです。
また、右手に乳をすくい吸わせると今度は上手に吸ってくれます。
そこで、哺乳バケツの乳首を口にくわえさせるのですが、なにしろ初めてですのですぐに出してしまいます。
乳首を乳で濡らしてまたくわえさせます。そして手で乳首をつまんで口の中に乳を出してやります。でもまた嫌がって乳首を出してしまいます。こんなことを何度かしているとそれでも乳の味に慣れるのか吸うようになりました。
こうなればよく吸うのですが、それでも何度か出すので同じように繰り返しでようやく飲ませることが出来ました。
子牛の個性が出るところで大体これで今後の哺乳の上手下手が解ります。この子牛はどうも下手のようです。

 続いて親牛の餌をやり、搾乳します。今日生まれた八重は最後に絞ります。
八重の乳房は大きく張っています。始めにカップに前絞りし、ブツが出ていないかよく観察しますが、出ていないようです。そして、乳房炎検査でPLテスターをあたってみます。これも大丈夫です。そこでミルカーで搾乳です。この時は6リットルくらいでミルカーを外して終わりです。乳頭を固く絞ったタオルで乳頭をふき取りテートデッピングをします。
ミルカーの洗浄後、牛床に消石灰を撒き、敷き料を入れます。通路も湿気が多いので消石灰を撒きます。扇風機が回っているので牛舎内に漂った消石灰もすぐに牛舎の外に吹き飛ばされました。
こうして夜の牛飼いを終わりご主人は住宅に帰っていかれました。我々乳牛も、新しく敷き料の上に座り反芻をしながら休みます。

 夜中11時半に出てきたご主人、配合飼料をくれてから八重を眺めて異常のないのを確かめてから帰って行かれました。
扇風機は中にして回りっぱなしです。我々乳牛は人間より5度くらい暑く感じるので20度までは夜中も回しっぱなしです。

(ケトーシス)
 9月25日朝、どうも八重が物食いが悪いです。乳量は36kgほどで昨日よりも明らかに2kgは減っています。
今日は朝から雨で湿度もかなり高いです。しかも気温も下がって少し寒いくらいです。
ご主人は体温計で体温を測ったところ38.8度でちょっと高いのですがまず平熱です。乳房炎もありません。これはケトーシスかもしれません。すぐにA獣医に連絡をとります。
それからケトーシスの検査用に小便してくれるのを待つますが、これが待てども出しません。
A獣医が9時前に来られて、診察します。聴診器で左腹部、心臓部、右腹部と見ながら手でポンポンと叩いて見ます。ガスは溜まっていないようです。
分娩直後のこの時期は周産期病といっていろいろな産後によく起きる病気があります。その中で急激な乳量の増加で体脂肪の動員がうまく出来ないで起こるケトーシスがよく起こります。
A獣医さん、「どうも第四胃変位など悪いところは見られないのでケトーシスかも知れないが小便は取ってありますか?」「いや小便してくれないのでまだですのでワラでこすってみましょう」とご主人。
乳牛は陰部の下をワラでこするとよく尿意があり小便してくれます。
でも尿意がありそうでない
「なかなか出ませんよ」
「ではちょっとワラで私がやってみましょう」と獣医がワラの穂先でこすると尿意が出てきました。
ちびちびと小便してくれます。これを容器に取り、試験紙を入れて尿の検査をします。
その結果軽いのですがやはりケトーシスです。
「天候不順ですので体調が悪くなるのでしょう」「そうですか、ケトーシスにはナイアシンが良いと聞いていますのでスーパーナイアシンをやっているのですが、あまり効かないですね」「まあ、いろいろと研究はされていますが牛の体調とか餌の問題、天候にも左右されますので抑えきれないのかもしれないです」と会話がされます。
A獣医さんは薬のネオルノーゲンを6本置いて「朝晩飲ませてください」と帰って行かれました。
ご主人、すぐにネオルノーゲンを八重に飲ませました。この薬、味は非常に甘いです。体脂肪の代謝異常で血中の糖が不足しているのでそれを補う薬です。

 ケトーシスは周産期病の一つで、餌から取る養分が乳量の必要量に追いつかず体脂肪を動員している状態で、このときに代謝異常を引きおこしているのです。
乾乳から分娩後泌乳開始後の餌の飼養管理のまずさから起こるとされています。気温が下がった時など、ストレスが大きいと発病が助長されます。

 さて、飲ませて2日ごろから物食いが良くなり、乳量も元に戻ってきました。回復して来たのです。でも薬は3日間飲ませました。軽いケトーシスでありました。ひどい場合は本当に物食いが回復しなく、下痢をしたり、極端にやせてきます。
その後、餌もよく食べるようになり一安心です。スーパーナイアシンでひどいケトーシスは防ぎたかも知れません。

(急性乳房炎)
 10月のかかりのある朝、絵里が物を食いません。ご主人はすぐに乳房に手を当ててみます。1年ほど前に乳頭を踏みつけて急性乳房炎になり、また乳頭狭さくで治療の甲斐もなく盲乳にしていた乳房が固く腫れあがっています。これもまた急性乳房炎です。
すぐにご主人はA獣医に連絡を取り、状態を説明しました。
 A獣医はすぐにやって来られ、体温を計りながら聴診器であちこち診ます。体温が40.4度で危険な状態です。
「どうしましょうか、抗生物質の注射液がありますので打ちましょうか」「そうしてください。お願いします」とご主人。「アンピシリンですので休薬期間が3日です。熱は1日でだいたい1度下がってくれば良いです」「そうですか下がりすぎるのも良くないですか」「良くないですね。2、3日かけて平熱に返るのが良いです。乳房は絞り切って軟膏を入れてください」「だいたい盲乳してあったのですがそうします」

 A獣医さんは、リンゲル液にアンピシリンを溶き、首の静脈から注射です。点滴注射なので獣医さんが、「今年も結構乳房炎でましたよ。乳房炎は措置が難しいです」と「そうですか、雨が多かったせいでしょうか」「夏の疲労がこの時期に出てきますので繁殖も今ひとつ悪いです」と話が続きます。

 乳牛は暑さと湿気には弱いです。湿気が少ない夏は意外と元気ですが秋雨になるとやはり疲労がどっと出てきて乳房炎を引き起こしたり、繁殖も悪い状態が続きます。
 この絵里の乳房炎も2回の抗生物質の注射と軟膏で熱も下がり回復してきました。
しかし、慢性乳房炎になったようです。もともと盲乳していたので乳ほとんど出ませんが毎日搾乳しないとまた炎症が起こる状態であるようです。

 10月に入ると気温もかなり下がり、また天候も良くなりだし落ち着いてきました。こうなると乳牛も状態が良くなり餌も良く食べるようになります。
今年の秋雨も終わりです。やはりこの時期もいろいろとあり乳牛という動物の飼育の難しさを感じ取りました。これから秋です。乳牛の安定な時期でもあります。
ご主人さん、お互いに頑張っていきましょう。


6季 秋

 こんにちわ、6季の中の秋についてお話します。

 秋、空高く馬肥ゆる秋、俳句にもなるほど秋晴れの空は青く澄み切っています。そして乳牛も暑さと湿気に開放され、食欲大盛になり体力が回復してきます。
本当に餌の食い込みが良くなります。今まで飼槽に残していたのが綺麗になめ尽くされています。
ここで、餌を追加して食わせるといくらでも食うのですが、どうも体調を崩す仲間が出て来るのでご主人は乾草だけをちょっとだけ多くくれます。

 今年は梅雨の時から敷き料を置く前に消石灰をまいていますのでそのせいかも知れないですが急性乳房炎の発生が減ってきています。まことに良いですね。乳房炎だけは牛乳を破棄しなければならないのですごく損失が大きいのです。

 ところで、この10月に1頭、無事分娩して乳量も順調に増え2産ですが40kg出しています。秋雨の9月分娩も42kg出していますのでご主人も気持ちよく搾乳されています。
もちろんそれなりの餌の管理も飼料計算で十分にされていると思います。もっとも飼料計算で求めた数値が万全とは今までのご主人の経験ではないと解っていますが。

 ご主人はパソコンで飼料計算したり繁殖、分娩、子牛などの管理を行っています。
もちろん、ご主人はMIMソフト工房のプログラマーでもあるので自分が作成したソフトの新2本立て給与法の飼料計算で出た数値を基礎に経験上のノウハウを足して数値を出されます。
また飼養管理ソフトのMIM乳牛管理をふんだんに使用しています。
このソフトはパソコン起動時にメッセージとして、今日の発情(3日前から)、次回の予定、今月の分娩、乾乳予定、分娩後未発情牛の日数を検索するのでまことに便利です。

 10月16日パソコンを起動すると起動時お知らせが八重の分娩後35日目で検出され、メッセージが出ました。
「そうか、35日たったのか。発情がそろそろだな、見逃さないようにしなくては」とご主人は独り言を云っておられます。
それから毎日パソコンは表示で日数を出してきます。10後の45日目に八重の陰部が緩んで来たようです。
今日は10月26日。今種付けして今度の分娩は月から3を引いて日にちに6足すと8月1日です。ご主人は今回は真夏に生むことになるので止めよう、9月に生ませようと思いそうすることにしました。
そこでパソコンを起動してMIM乳牛管理を立ち上げて発情日に10月26日と入力しました。
今度の発情予定は21日先の11月16日です。これも8月中の分娩予定になるのでその次の発情予定の12月7日に種付けをすることにしました。これですと分娩は9月13日となります。12ヶ月の分娩間隔ですのでこれでやることにしました。

 7月に種を撒いたデントコーンが刈り取り時期となっています。デントコーンの色合いがちょっと濃い気味で硝酸体窒素が心配ですので刈り取りをちょっと遅らせることにしていたので実のミルクラインが中央より過ぎた頃に合わせて刈り取りすることにしていました。
10月1日には、早いと思っていたのですが、10日には実が固くなりミルクラインも過ぎた状態となり、葉のかれ具合が多くなって見えます。
今年は夏も雨が多く、また高温でしたので熟期が進んでいたのかも知れません。サイレージはあまり水分が少ないと2次発酵しやすくカビの発生の原因となります。よって刈り取りを始めることにしました。
ご主人はサイロはその都度鉄板で作成します。ま、安上がりですがちょっとだけ手間がかかります。
鉄板を丸く円にしてその中にビニールを入れてサイロとします。
トラクターにエレベータワゴンをセットして、コーンハーベスタを運び準備OKです。
デントコーン畑の縁狩りを奥さんと2人で済ませ、刈り取りです。
コーンハーベスタの1条刈りですのでそんなに早くはないですが1日に15アール程度の速度で刈り取ってサイレージ調整します。
雨も降るので結局終わったのが24日でした。もちろん酪農専業ではないのでその他の作業をしながらです。
今年は豊作でしたので鉄板サイレージが10本出来ました。

(盲乳処置)
 さて、10月の秋雨時期の時、急性乳房炎をやった絵里ですが、来年2月16日が分娩予定です。乾乳が逆算で60日前の12月16日です。
今絵里は急性乳房炎が慢性乳房炎に移行しており毎日搾乳しています。ほとんど牛乳は出ませんがこの状態で乾乳するとまた急性の戻って来るでしょう。おそらく熱がでて来るので大変だと察しが付きます。
そこで、ご主人は1ケ月前の11月にこの慢性になっている乳房を盲乳処置を取ることにしました。盲乳処置は、以前にアルコールを注入すると出来るとは聞いていましたが今現在やったことはありません。
今までの盲乳は絞るのをやめて急性乳房炎にして搾乳を止めた状態で様子を見て場合によっては治療しながらやります。
もちろん固く腫れあがって炎症がおこり大変です。こうして置くと乳房の皮膚が破れて膿が出ます。そして炎症が治まり乳房は小さくなって盲乳されます。
もちろん、我々乳牛にとっては大変痛い目に合う訳で場合によっては命まで落としかねない方法だと思います。
ですので、この方法は乳牛の体力が落ちている梅雨と夏と秋雨の時期はやらないほうが良いのです。

 ご主人は思い切って搾乳停止しました。
案の定、3日目に急性乳房炎となり40.5度の熱を出しました。早速A獣医に連絡取り抗生物質のアンピシリンを静注していただきました。
その次の日に残りの3本の搾乳のためにカップに前絞りすると3本全てがブツが出ます。
これは、大変なことです。ご主人は慌ててPLテスターで検査すると真っ青な色とどろどろできつい乳房炎症状を起こしています。でも、乳房は腫れていません。
こう云う事はめったにないのですが、この乳房炎は治りにくくよく廃用の対象となります。
ご主人はA獣医さんから、乳房炎軟膏を取り寄せ、3本に注入しました。翌朝、やはり搾乳するとブツブツと出てきますが、乳房自体はやわらかく腫れていません。 そこで、県の家畜保健衛生所に検査に出すことにしてサンプルを取り国立公園大山周りで溝口に出かけました。
美人の家保の技師さんは、「菌が出ない乳房炎かも知れないですね。また結果が出ましたら連絡します」とのことで、紅葉にはちょっと早い大山を通りすぎて帰ってこられました。

(無菌性乳房炎)
絵里の熱は注射3回したのが効いて平熱まで下がって来ましたが。例の3本はやはりブツが出て、乳房炎症状は残っています。乳の味はとてもおかしな味で飲めるようなものではありません。こうなるとこの牛乳は廃棄処分で出荷は出来ません。乳房炎軟膏は1回だけで差すのはやめて、様子を見ることにしました。

 1週間になりますが、あの3乳房は少しの改善はありますが体細胞は150万で、おまけに血乳もあるようです。まだまだ出荷できる状態ではありません。
盲乳にした乳房は少し小さくなってきました。もう熱も下がり大丈夫です。
本当に大きい代償を払いました。牛乳の廃棄はいつまで続くのでしょう。

 ところで、ご主人はパソコンでNifty-Serveの食と農の広場でこのことについて書き込みしたところ、盲乳の仕方で良い方法を得ることが出来ました。
それは
35%アルコールを搾乳毎に150ml〜200mlの注入を3日ほど入れて搾乳中止する
今度このようなことがやってみたいですね。熱が出るのもかなわないです。

 2週間してもまだ100万程度の体細胞は出ています。今日はもう1度家畜衛生保健所に検査することにしました。やはり大山回りで国際スキー場を走っていると雪の山があちこちと出来きているのではありませんか。人口雪を作ってパイプで放出しているのです。ちょっと車を止めてデジカメで撮っておきました。
ご主人のホームページに載せるのです。
3日後家保から連絡でやはり菌は出ないとの報告がありました。これはまさしく無菌性乳房炎です。
この頃からだんだんと乳の味も良くなりだしました。PLテスターの反応も色は(−)で凝固は(+−)です。
そこで組合に体細胞の検査依頼して見ると40万〜60万と大分良くなっています。

 それから6日ほどしてから体細胞の最検査で18万〜22万となり30万未満となりました。
これは出荷しても良い状態です。そうです。盲乳処置してから約3週間で良くなったのです。本当に長く感じました。今晩からは絞った牛乳が合乳できるのです。バン万歳です。

(人工授精)
 11月16日、パソコンは八重が発情予定日であるとお知らせで教えてくれています。
でもまだ発情の気配はありません。注意しながら見ていると2日後に兆候が出てきました。陰部が緩んできたのです。早速A獣医に連絡をとるとご主人が朝食中にこられました。急いでナガクツを履き牛舎に入ります。
獣医「何時気が付きましたか」「今日の朝ですよ」と直腸に手を入れて直検です。
「まだ早いですが確かに発情です。前回の黄体がまだありますし、右側に卵房があります。明日が適期でしょう。」「そうですか、ところで今回は生む月が8月になるのでやめて次回にしようかと考えています」「そうですか、そうすると今度の予定日にきて見ます」
「夏に生ませて万一乳房炎になれば何にもならないのでそうします」と話は続きます。
「夏生みを敬遠される方は多いですよ」「乳代は高いですが、病気の方が怖い」「それと9月生みですので来年も9月で行きます」
そうです。1年1産を目途に行けば上々です。でもなかなかこれが難しいのですよ。ご主人様。
獣医と別れた後、パソコンでMIM乳牛管理を呼び出し、繁殖台帳に今日の11月19日を入力しました。

 12月7日、パソコンの電源を入れるとお知らせ機能が働き10日が発情予定と示しています。MIM乳牛管理は発情3日前からお知らせ機能が働きます。
ご主人は八重の状態を注意することにしました。今日はまだしまったままです。
10日の朝、搾乳の準備に入ったご主人は八重を見ると陰部がちょっと緩んだ感じがしています。ご主人は「どうも発情が来たようだな。今日はA獣医が朝のうちにお出でになるよ」と奥さんに言っておられます。そうです、A獣医の診察予定には必ず予定が書いてあるので連絡しなくても朝のうちにお出でになられます。
搾乳が終わって後片つけをしていると自動車の音が聞こえます。A獣医さんが来られたのです。
「おはようございます。今日は発情予定日ですので見てみます」「おはようございます。どうもそのの気があるようです。見てください」「そうですか、見てみます」とA獣医は早速手を入れて直検です。
「黄体も小さくなっていますし、左の卵房も程よい大きさです。今晩種付けしてください」
「解りました。早速電話します」「明日また来ます。排卵を確かめておきます」とA獣医さんはご主人と話をされて返っていかれました。
ご主人は、朝飯を食べてから、S受精師さんに今晩種付けをお願いしますと電話をかけられました。

 夕方5時頃にご主人がサイレージ取り出しの準備をしているとS受精師さんがやってこられました。
ご主人は八重の尻尾をロープで縛り首に巻きつけて尻尾を固定します。そして湯を準備しました。
「獣医さんに見て頂かれました?」「はい、見てもらいました。左に卵房があるそうです」
「そうですか、今日は何をつけられますか」「乳牛をお願いします。あまり乳房の大きくならないのをね」「それではお任せで良いのを付けておきます」「しかし今年はオスばかり生まれました。メスが生まれるのが良いですが」「なかなか難しいですね。産み分け出来るようになればいいのですが」「しようがないですね。本当にオスばかり」
凍結精液を取り出し湯に数秒間浸けて、解凍します。それから受精用器具にセットして八重の前で陰部を良く洗い、アルコールの含ました脱脂綿で陰部を消毒します。
それから、精液がセットされている器具を静かに陰部に入れ右手を直腸に入れ込みます。右手で膣と子宮頚管をつかみ左手で静かに器具を入れていきます。頚管を通り越したところで左の子宮のほうに向けて、精液を注入します。
器具を引き出して、子宮をマッサージして緊張させ、ついでに左の卵巣の状態を確認しておきます。卵房がやわらかく今にも排卵する状態で良い状態です。
「終わりました。良い状態です」「お世話になりました。明日、獣医さんが確認に来られます」「そうですか、A獣医は熱心ですね」「そうです繁殖に関してはりっぱな物です」
人工授精証明書を書いて受精師さんは帰られました。

 翌朝にA獣医さんが来て、八重の状態を直検して、「排卵しています。これなら大丈夫でしょう」「それは、良いですね、今度はメスが生まれると良いですが」とご主人、大分メスにこだわっています。

(2条大麦のサイレージ調整)
 11月20日になると9月の上旬に撒き付けていた2条大麦が穂を出しています。今年はまき時が雨で遅くなった為に、実の入りはほとんどありませんが冬に向かっての作業ですので刈り取りサイレージ調整します。
サイロはスタックサイロで敷地にビニールを敷きその上にフォーレージハーベスタで刈り取った大麦を踏み込みビニールをかけて縁を土を置いて密封します。
今年は乳牛が1頭少ないのでいつもの年より20アール減らして、70アールです。
この頃になると雨がよく降り、作業も毎日とは行きません。何とか26日に終わり、25アールはすぐに鋤き込みです。来年は葉たばこの作付けで、この後クロールピクリンの消毒します。

 さて、12月に入り、紅葉が今年はこの地域でも綺麗です。普通はそんなに綺麗にはなりませんが、今年は11月の中旬が天候に恵まれ、昼夜の温度差が有ったため、どんぐりや栗、漆、はぜの葉が見事に紅葉したようです。
これから、冬の季節です。我々乳牛は極端な温度差がなければまずまずの時期でもあります。

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